がんが発症する仕組みについて紹介
がんは細胞の遺伝子が傷つくと発生します。がん細胞に変わるとされる傷の目安は、通常2個から10個です。正常な細胞の遺伝子の傷が原因で発症するがんを「多段階発がん」といいます。
多段階発がんは遺伝子が徐々に傷ついた結果として発症します。多段階発がんは、身体の状況に関わらず増殖を長い間繰り返して周辺の細胞を壊し続ける特徴があります。時間をかけてがん細胞になる遺伝子には2つのパターンがあるので、それぞれ解説していきましょう。
- がん遺伝子の活性化
- がん抑制遺伝子の不活化
がん遺伝子の活性化
がん細胞ができる1つにがん遺伝子の活性化があります。がん遺伝子とは、がん細胞が増殖し続ける働きを持った遺伝子です。がん細胞が増殖し続ける原因としては、遺伝子からつくられるタンパク質とされています。
がん遺伝子の働きが異常に強くなると、細胞増殖が止まらなくなります。そのため、たんぱく質を抑える治療ができると、増殖が止まる可能性が高いです。
がん抑制遺伝子の不活性化
がん細胞は、がん抑制遺伝子の不活性化によっても発症してしまいます。がん抑制遺伝子が機能しないと、がん遺伝子の増殖が抑えられません。結果的に、がん遺伝子が進行を続けて、がん細胞に変化しやすくなります。
一般的にがん抑制遺伝子は細胞に生じた傷の修復をするように誘導します。しかし進行を抑える機能が不活性化によって作用しなくなると、がん細胞の増殖が止められません。
がんになる原因とは
がん細胞は遺伝子に傷ができると発症するとお伝えしました。遺伝子に傷がつくのは、どういった生活習慣に原因があるのでしょうか。遺伝子に傷がついてがんになってしまう要因を、生活習慣から読み解きます。
喫煙
喫煙はがんになるリスクを大きく高めます。ニコチンやタールをはじめ、発がん性の物質がタバコには数多く含まれているからです。実際に喫煙が原因で、がんを患った人は男性で30%、女性で5%います。
あらゆる場所にがんができるリスクもあるので、喫煙はがんのリスクを大きく引き上げる生活習慣といえます。
飲酒
飲酒もがんを発症する要因を高めるとされています。体内に摂取したエタノールが、発がん性のあるアセトアルデヒトに代謝される点が原因です。具体的に飲酒によって発症しやすいとされているがんは7つあります。
- 口腔がん
- 咽頭がん
- 喉頭がん
- 食道がん
- 大腸がん
- 肝臓がん
- 乳房がん
飲酒もがんを発症する要因を高める生活習慣の1つです。
食習慣
確実にがんのリスクになるとされている食品は現在のところはっきりしていません。リスクを増減する関係性がある食品は研究によって確認されています。
以上のように、食品や食料によってもがんの発症リスクが変わる点も押さえておきましょう。
運動習慣と体格
運動する習慣があると、がんの発症リスクは下がるとされています。運動によって、インスリンの働きが改善され免疫機能も増強されるからです。実際に運動習慣で結腸がんや閉経後乳がん、子宮体がんのリスクを下げる研究結果が発表されています。
運動習慣が確立されていない肥満の場合は、以下の部位にがんが発症するリスクが高いです。
- 発症リスクの高い部位:食道・膵臓・肝臓・大腸・乳房(閉経後)・子宮体部・腎臓
以上から、生活習慣とがんになるリスクの因果関係は明らかです。普段から生活習慣に気を付けて生活しましょう。
がんの再発と転移とは?
身体の細胞は、異変があると増殖をとめたり修復しようと試みます。しかし、がん細胞は増殖を繰り返して止まりません。せっかく治療でがん細胞を取り除いても、同じ場所にがんが「再発」する可能性があります。
さらに徐々に増殖を続けると、いたるところにがんが乗り移る「転移」も問題です。ここからは、がんの「再発」や「転移」について解説します。
がんの再発
がんの再発は、治療では完全に取り除ききれなかったがん細胞が同じ場所に現れる状態です。取り除ききれなかったがん細胞が別の場所で発見される場合も再発にあたります。具体的な再発のイメージは以下の3通りです。
- 手術等で目に見えない小さながんが残っていて同じ場所に現れる(局所再発)
- 抗がん剤や放射線でがん細胞を縮小させていたが再び大きくなる(領域再発)
- 身体の別の場所に、もともと違う場所にあったがん細胞が現れる(遠隔再発)
一般的に初回のがん治療は抗がん剤で行われますが、がんの再発は決して珍しくありません。再発した場合は、がんの状況や内容を見ながら次の治療方法を考えます。
がんの転移
がん細胞は血液やリンパ管にのって、別の臓器や身体の器官に移動する場合があります。別の場所に移動しても、今まで通りがん細胞は増殖を止めません。このように、別の場所に移動してからがん細胞が増殖する現象を転移といいます。
一般的に細胞は身体の臓器や部位に関係している場所でしか活動しません。もし細胞が本来活動する持ち場を離れると消滅します。しかし、がん細胞は身体のどこに移動しても消滅せずに増殖が可能です。転移の種類は以下の3つです。
- リンパ行性転移:リンパ液の流れが集まるリンパ節への転移
- 血行性転移:肺や肝、臓、脳、骨など血液の流れが豊富な場所への転移
- 播種(はしゅ):がん細胞がはがれて、近接する胸腔や腹腔に散らばって広がる
がん細胞は無数に身体のあちこちを行けますが、転移先によって呼び方も変わります。代表的な転移先は以下の通りです。
- 肺転移
- 肝転移
- 脳転移
- 骨転移
- 腹膜転移
転移が引き起こされている場合は、抗がん剤やホルモン療法が中心になります。
がんの再発や転移によって治療にかかる費用もかさむ
がんの再発や転移で治療が長引くと、家計には大きな負担が伴います。がん政策情報センターの調査によると、70%を超える人が治療費に負担を感じていると発表しました。
がんの再発や転移は治療を行ってすぐに見つかるわけではありません。長い時間をかけて見つかってしまう可能性もあるので、費用面が負担に感じるのでしょう。再発や転移で治療が長引いたときの準備や対策をしっかりとやっておく必要性があります。
再発や転移によって治療の長期化を想定した準備が大切
がんが発症するメカニズムと、再発や転移について解説しました。がん細胞は生活習慣の乱れが主な原因で遺伝子に傷がつき発症してしまいます。遺伝子に傷がついてがん細胞になると、増殖を続けて再発や転移の危険性が高まります。
再発や転移にはいくつかパターンがあり、どういった治療をするかも状況に応じてさまざまです。一般的にどの治療を選んでも、再発や転移が起こると治療期間は長引きます。長引く治療に耐えられるように、がん保険を活用したお金の準備をしておくと安心です。
出典
国立研究開発法人 国立がん研究センター 細胞ががん化する仕組み
https://ganjoho.jp/public/knowledge/basic/cancerous_change.html
国立研究開発法人 国立がん研究センター たばことがん
https://ganjoho.jp/public/pre_scr/cause_prevention/smoking/index.html
国立研究開発法人 国立がん研究センター がんの発生要因
https://ganjoho.jp/public/pre_scr/cause_prevention/factor.html
がん政策情報センター がん患者意識調査2010年
https://hgpi.org/lecture/153.html
この記事を書いた人

- 2級ファイナンシャルプランニング技能士
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