性別で影響されるがんの統計を3つ紹介
がんにかかるリスクや生存率は、男性と女性でどう変わるのでしょうか。国立がん研究センターの3つの統計から、がんと性別に関係性があるか解説していきます。
性別による罹患率
がんと一生のうちに診断される割合を「罹患率」といいます。男性と女性で結果を確認すると、罹患率に差が生じました。
性別 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
罹患率 | 65.0% | 50.2% |
女性より男性のがん罹患率が高いです。男女とも2人に1人はがんと診断されるため、罹患率は男女ともに高いと認識しておいた方がいいでしょう。
性別による死亡率
がんによって亡くなる割合を男女別で確認すると、男性の死亡率は女性より高いです。
性別 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
死亡率 | 26.7% | 17.9% |
死亡率の推移は「年齢調整死亡率」で見ると、減少を続けています。年齢調整死亡率とは、年次ごとで年齢人口構成が変わった影響を除いた指標です。
性別/年次 単位は% | 2000年 | 2010年 | 2020年 |
---|---|---|---|
男性 | 214 | 182.4 | 147.6 |
女性 | 103.5 | 92.2 | 82.6 |
男女計 | 150.4 | 130.9 | 110.9 |
*率は人口10万対
以上より年齢調整死亡率も毎年減少を続けているため、がんで亡くなる人の割合は徐々に少なくなっているといえます。
性別による5年相対生存率
5年相対生存率とは、がんと診断された人が5年間生存している割合を意味します。男性と女性の5年相対生存率に差があるか確認しておきましょう。
性別 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
5年相対生存率位 | 62.0% | 66.9% |
女性が男性をわずかに上回る結果となりましたが、ほとんど差はありません。以上より、がんに罹患する割合や死亡率は性別が少なからず影響しているといえます。
性別による部位別の罹患数と死亡数
がんになりやすい身体の部位も、男性と女性で大きく変わります。まずは男女でがんに罹患した総数をランキングでまとめました。
順位 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 |
---|---|---|---|---|---|
部位 | 大腸 | 胃 | 肺 | 乳房 | 前立腺 |
罹患した数では、大腸が最も多い結果となりました。続いて、がんによって死亡した人の数を見ておきましょう。
順位 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 |
---|---|---|---|---|---|
部位 | 肺 | 大腸 | 胃 | 膵臓 | 肝臓 |
死亡数が最も多かったのは肺がんでした。男女で合計している結果を、男性と女性で分けた場合はどう変化するか、順番に確認していきましょう。
男性による部位別の罹患数と死亡数
男性でがんを患う身体の部位で最も多い箇所は、前立腺です。前立腺に続いて、胃や大腸、肺、肝臓の順で罹患数が続きます。
順位 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 |
---|---|---|---|---|---|
部位 | 前立腺 | 胃 | 大腸 | 肺 | 肝臓 |
がんで亡くなった人で、最も死亡者が多いがんは肺がんでした。続けて胃、大腸、膵臓、肝臓と続きます。
順位 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 |
---|---|---|---|---|---|
部位 | 肺 | 胃 | 大腸 | 膵臓 | 肝臓 |
前立腺は罹患する数自体は多いものの、死因としては上位にランクインしませんでした。
女性による部位別の罹患数と死亡数
女性でがんを患う部位のうち、最も多かったのは乳房でした。続いて大腸、肺、胃、子宮と続きます。乳房や子宮といった女性器にがんができる割合が多いです。
順位 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 |
---|---|---|---|---|---|
部位 | 乳房 | 大腸 | 肺 | 胃 | 子宮 |
女性のがんによる死亡数は大腸が最も多い結果となりました。大腸に続いて肺、膵臓、乳房、胃の順で死亡数は続きます。
順位 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 |
---|---|---|---|---|---|
部位 | 大腸 | 肺 | 膵臓 | 乳房 | 胃 |
以上から、がんを患う場所や死亡数は性別によって異なります。特に、罹患率は男性と女性で傾向が大きく違っていました。がん保険に加入したい人の選び方としては、性別に応じたカスタマイズが可能な商品かどうか見極める必要性があります。
年齢別の罹患割合
年齢によってがんにかかるリスクや影響はあるのでしょうか。各年齢別でがんを患ってしまった人の割合を解説します。
0歳~19歳では4歳までの罹患率が最も高い
出生してから4歳までが、がんの罹患率が最も高くなりました。14歳未満では白血病や悪性リンパ腫、脳や中枢神経系のがんが多いです。
年齢帯 | 0~4歳 | 5~9歳 | 10~14歳 | 15~19歳 |
---|---|---|---|---|
全がん割合 | 20.3 | 10.6 | 12.3 | 15.2 |
*率は人口10万対
20代は25歳以降から徐々に罹患率が高くなる
20代は25歳以降にがんの罹患率が上がり始めます。男性は罹患する部位にばらつきがあります。一方で、女性は「乳房・子宮頸部・卵巣・甲状腺」で割合が高いです。
年齢帯 | 20~24歳 | 25~29歳 |
---|---|---|
がん罹患率 | 24.5 | 43.2 |
*率は人口10万対
30代は20代と同様の部位の罹患率が大きく増加する傾向
30代は20代の罹患率をさらに押し上げるような結果となりました。女性でみると「乳房・子宮頸部」の罹患率が20代と比較しておよそ3倍の数値です。男性は大腸と胃の罹患率が20代と比較して増えています。
年齢帯 | 30~34歳 | 35~39歳 |
---|---|---|
がん罹患率 | 77.2 | 132.8 |
*率は人口10万対
40代は男性で消化器系 女性で乳がんの割合が高い
40代から男性は胃や大腸に加えて、肺の罹患率が上がりはじめる傾向です。男性が罹患するがんは、40歳以上では消化器系が60%程度を占めます。女性は乳がんが約50%を占める結果となりました。
年齢帯 | 40~44歳 | 45~49歳 |
---|---|---|
がん罹患率 | 221.1 | 337.2 |
*率は人口10万対
50代も40代と同じく男性で消化器系 女性で乳がんの割合が高い
男性は消化器の部位で、胃や肺の割合が増えている傾向です。女性は50代の後半につれて、卵巣や子宮の罹患率が減がり始めています。
年齢帯 | 50~54歳 | 55~59歳 |
---|---|---|
がん罹患率 | 470.5 | 693.9 |
*率は人口10万対
60代は男性で前立腺、女性で消化器官の罹患率が増加
まだ明らかになっていませんが、前立腺がんは遺伝や男性ホルモンが発症の要因とされています。罹患する人の割合が高くなり始める境界線は、60代からといえそうです。一方で、女性は乳房の罹患率が減り始め、胃や腸といった消化器官の罹患率が高くなり始めます。
年齢帯 | 60~64歳 | 65~69歳 |
---|---|---|
がん罹患率 | 1048.7 | 1514.1 |
*率は人口10万対
70代から肺がんの罹患率が男女ともに高くなる
男性は依然として肺と前立腺への罹患率が高いです。女性は乳房の罹患率が減少している代わりに、肺の割合が増加し始めています。70代は男女ともにがん全体の罹患率が高いため、肺がんによる死亡数に影響しているといえるでしょう。
年齢帯 | 70~74歳 | 75~79歳 |
---|---|---|
がん罹患率 | 1958.8 | 2305.6 |
*率は人口10万対
80歳代は全年齢帯で最もがん罹患率が高い
80代以降は最もがんの罹患率が高いです。男性は肺がんと前立腺がんの割合が大きくなります。女性も大腸や肺など消化器官の罹患率が高いです。
年齢帯 | 80~84歳 | 85歳~ |
---|---|---|
がん罹患率 | 2522.3 | 2522.4 |
*率は人口10万対
がんは年齢や性別で発症する種類も違うので、個別の条件を考慮して検討が必要
がんは性別や年齢で、発症する部位や割合に影響している結果となりました。基本的に、男性と女性で罹患する部位は大きく異なります。特に乳がんや子宮がんといった女性特有の部位の罹患率が高いです。そのため、女性特有のがんへの備えが必要だといえるでしょう。
出典
国立研究開発法人 国立がん研究センター 最新がん統計
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html 公益財団法人 がん研究振興財団 がんの統計2021
https://ganjoho.jp/public/qa_links/report/statistics/pdf/cancer_statistics_2021_fig_J.pdf
この記事を書いた人
- 2級ファイナンシャルプランニング技能士
最新の投稿
- コラム2022.05.19がんが発症するメカニズムと再発・転移の定義や特徴をやさしく解説
- コラム2022.05.19意外と知られていないがんの種類と4大治療法を現役FPが丁寧に解説
- コラム2022.05.19【意外と知らない】がんになると必要な治療費の相場をケース別で紹介
- コラム2022.05.19がん保険で押さえておくべき6つのメリットとデメリットを徹底解説